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米中対立のはざまに船出した「手抜き」の菅政権


手嶋 (中略)超大国アメリカは、じつに様々な問題を抱えています。アメリカ版永田町政治のような腐敗も見受けられます。深刻な人種間の対立も抱えている。しかし、ことアメリカ大統領を選ぶ過程では、これまで大がかりな不正が行われた例はありません。

本書 p.87

佐藤 (中略)今の日本の法律では、ダミー会社を使えば、簡単に戦略上の要衝を買えてしまう。それを規制する法律はありません。こうしたケースでは、一般の官庁では手も足も出ない。ところが公安調査庁は、水面下で進行するこうした事態を調査し、精緻な情報を取りまとめて官邸にあげることができる唯一のインテリジェンス機関なんですよ。

本書 p.196

本書は前回の『公安調査庁 情報コミュニティーの新たな地殻変動 (中公新書ラクレ)』に続く手嶋龍一と佐藤優による対談本です。本書では日本を取り巻く現在の国際社会の中、菅義偉政権誕生で日本がどういう方向に行くのか議論しています。

現状、菅政権は安倍政権の外交方針を受け継ぐとしていますが、肝心の安倍政権の外交方針とは何ぞや、となると見えてきません。北方領土交渉も行き詰まり、北朝鮮による拉致被害者の話も止まったままです。

さらに菅政権は政治的空白を生まないため、という理由から自民党総裁選を経ず「手抜き」で成立しています。アメリカ大統領選挙は1年にわたる熾烈な選挙活動を勝ち抜いたものだけがなれます。民主主義にはつきものの面倒な手続きを踏んで、ちゃんと選ばれてきています。日本とアメリカの民主主義の差を見せつけられる気分です。

現在、日本の周りにはアメリカを中心とした「日米豪印同盟」と一帯一路構想に代表される「大中華圏」のつばぜり合いが起きています。新型コロナウイルスのワクチンをめぐって、中国が学術都市ヒューストンで諜報活動を行った結果、アメリカはヒューストンの中国領事館を閉鎖させました。そのような生き馬の目を抜く外交戦が繰り広げられている中、安倍政権のときより機動的な外交を菅総理はできるのか。本書を読むと不安が出てきます。

安倍総理はトランプ大統領とも馬が合い、プーチン大統領ともいい関係を築いていました。中国の習近平国家主席とはコロナがなければ国賓としての来日を実現させていたはずで、バランスを取りながら外交をしていました。そうした政治家個人による人脈と、安倍政権時代の官僚が変わったことで、菅総理はまた新たな外交戦略を迫られています。

コロナがあるから外交に目立った動きはありませんが、佐藤のいう「安倍機関」を引き継がなかった菅政権には一抹以上の不安が残ります。

なお、佐藤の予想では菅総理は自身の政権に疑問を抱かれないよう選挙をする、おそらく2021年1月までに行うとなっていましたが、その予想は外れました。


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中国国家主席の通訳が見た日中外交


ある日の夜九時頃、日本政府の赤坂迎賓館に泊まっていた彼(著者註:華国鋒 国家主席)は、入浴後に着替えた日本式の浴衣姿で建物の後ろの庭園に散歩に行きたいと外へ出ていった。私はびっくりして彼をとめた。この迎賓館のいたるところに警備員や新聞記者が数多くいるので、もし主席の浴衣姿の写真が誰かに撮られ、明日の新聞やテレビで報道され、おまけに冷やかすような説明を加えられたりしたら、きっとお茶の時間や食後の話題になり、大きなセンセーションを巻き起こすかもしれない、と述べた。

本書 p.170

南昌空港当局が言うには、広州の天候が荒れていて、終日飛行機の着陸を受け入れていない。日本の客人(筆者註:日本作家代表団)はこれを知るとあわてた。
(中略)夕方、(著者の上司の)廖から電話があった。周(恩来)総理に指示を仰ぐと、これは自分が引き起こしたことで、自分に責任があると言って大いにあわて、民航総局と空軍司令部に非常措置をとらせ、時間通りに広州に送り届けるように指示した。

本書 p.298

中国の国家主席の通訳を務めた筆者が間近に見た日中外交の様子を描いた本です。国家主席や総理等、中国のトップの姿を描いたため、共産党から出版の許可はもらったものの中国大陸では発行されず、香港で発行されました。

著者は1934年江蘇省生まれ、高校卒業時に学校の党支部から北京大学の外国語学部に入るよう通知を受けます。憎い日本人の言語を学ぶことに抵抗はありましたが、日本と向き合う人材が必要であると説得を受け、日本語を学び始めます。しかし翌年、学業を休止して共産党員として活動するように命じられます。本人は政治生活が肌に合わなかったらしく、日本語学習野道に戻してもらうよう掛け合い、日本と日本語の専門家になっていきます。

本書で初めて明かされるのは、日中国交正常化交渉時の大平正芳外相と姫鵬飛外相による一対一の車中会談です。田中角栄総理が訪中し、周恩来総理との日中首脳会談を行いますが、二回目で暗礁に乗り上げます。日本と台湾の平和条約であった日台条約の取り扱いを巡って食い違いが起こりました。そんな中、中国側がセッティングした万里の長城への視察の道中、急遽大平外相が「姫外相と二人で話をしたい」と言い出し、同乗者を替えて車中会談を行います。車内は両外相の他、運転手と通訳である著者のみでした。そこで二人は落とし所を見つけます。日中国交正常化への情熱が伝わる貴重なエピソードです。

ほかにも文化大革命のさなか、情勢への対応に忙殺される周恩来の様子や、大平首相の招きで訪日した一ヶ月後に大平首相が亡くなり、弔問のために再来日した華国鋒は国家の情勢から大平家の返礼を受けられなかったこと、大平外相は田中角栄首相に送られた書が論語であるとすぐ分かった知識人だったことなど、国家の首脳を間近で見ていた著者ならではの話が披露されます。ピンポン外交が米中のみならず、日中関係にも大きな影響を与えたことは本書で初めて知りました。

中国では外交官が人民日報で働いたり、国家の規律上言えないこともあったなど、中国の内情が垣間見える話も出てきます。中国での出版が許可されなかったのも、このあたりに原因があるのかもしれません。


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中国のネット社会に希望はあるか?


老人がスローガンを書いた黒板の横で腰掛けている写真もある。黒板には白いチョークで次のような文句が書かれている。

美医保 没社保 心中要有钓鱼岛
(医療保険も社会保険もない でも心には釣魚島)

就算政府不养老 也要收复钓鱼岛
(たとえ政府が老人を養わなくても 釣魚島を取り戻す)

没物权 没人权 钓鱼岛上争主权
(財産権も人権もない だが釣魚島では主権を争う)

买不起房 修不起愤 寸土不让日本人
(家も買えず 墓も直せない でも寸土も日本人に譲らない)

本書 p.200

「祖国万歳! 共和国万歳! 日本帝国主義打倒! ドイツファシズム打倒! でも家電はやっぱり日本製とドイツ製が良い(後略)」

本書 p.255

中国のネット社会の現状(2016年段階)について書かれた本です。中国では官製ネット規制(金盾、グレートファイアウォール)の実情に迫るのかと思ったらそうではなく、中国のSNSやブログで起きている流れを紹介しています。著者は1966年生の共同通信社記者、97年から対外経済貿易大学に語学留学し、その後共同通信社の中国語版ニュースサイト「共同網」を企画、運営していました。

私は中国の通信規制に興味があったので本書を手に取りましたが、そうではなく、中国の言論規制とそれをかいくぐるネット民の話でした。中国ではネット回線の管理をしている工業情報化省のほか、三つの通信会社、各自治体が通信制限をしており、地域や時期で状況が変わります。また、中国中央電視台はYouTubeに公式チャンネルを持っていたり、軍部はアメリカの通信サーバにアタックを仕掛けるなど、規制を「公式に」かいくぐる党機関(どちらも国家というより党の組織)もあるなど、複雑です。そのあたりはベールに包まれており、おそらくは多くの人員が投入されていると思いますが、実情は闇の中です。

本書ではまず中国のネットの趨勢がブログ、マイクロブログを経てSNS、チャットアプリに移行したこと、現在もっとも大きな影響力のある言論空間はSNSに移ったことが紹介されます。ネット民はときには党や政府の対応を批判、暴露します。たとえば2013年5月13日、中国のある学者が共産党から通知された「危険な西洋の価値観」をミニブログで書きました(七不講(中国語))。

  1. 普遍的な価値
  2. 報道の自由
  3. 公民の社会
  4. 公民の権利
  5. 中国共産党の歴史上の誤り
  6. 資産階級
  7. 司法の独立

こうした敏感な言動を言ったり発言する人たちに対抗するため、党や政府も手を打ちます。

  • 当該アカウントの削除、敏感な単語の検索を禁止する
  • 影響力があり敏感な発言をするブロガーを「買春」などの容疑で逮捕、中国中央電視台のニュースで謝罪の様子を報道する
  • 五毛党(御用ネット工作員)や自干五(自ら進んで五毛党になる者)の養成する

しかし、ネット民たちも負けてはいません。たとえば、引用であげたような、政府の対応を賛美するように見えて、実は現状を批判するなど、「高級黒」(高度なブラックジョーク)と呼ばれる遠回しな批判を行います。また、党や政府が抗日戦争を称えると「あなたの党とは無関係だ」(主に活躍したのは国民党である)という批判はしているようです。

そうした潮流で日本はどう中国の人々と向き合うか、が本書後半のテーマです。私達も中国の現状を知りませんし、また中国の多くの人たちも日本を知りません。まずはそうした相互理解を深めることが大事であると、本書のインタビューに応じたブロガーや研究者は異口同音に述べます。

個人的には現在の中国でネット民が社会体制を変える力を持つのは難しいように思っています。中国よりいくらか通信の自由が約束されている香港でもネットを用いた社会変革は成功しているとまでは言えません。また、中国は現在も年間6%程度の経済成長をしており、現状でも今後数年は豊かな未来が約束されているからです。しかし、長い目で見ると変革が起きるかもしれません。中国で何が起きているか、私達には何ができるか。そのために相互理解が必要です。


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中国朝鮮ウォッチ 北朝鮮

2019年1月の金正恩訪中記念映画解説


2019年1月7日から10日にかけて、北朝鮮の金正恩 国務委員会委員長が中国を訪問、習近平 国家主席と会談しました。その訪中のようすが北朝鮮国営メディアである朝鮮中央放送で流れました。以下ではその詳細を見ていきたいと思います。

1月7日午後

00:04
タイトル「朝鮮労働党委員長であらせられ朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長であらせられるわが党と国家、軍隊の最高領導者金正恩同志におかれては中華人民共和国を訪問なさった 主体108(2019).1.7-10」
00:39
左に見える赤いビル、広いプラットフォームから、出発駅はおそらく龍城(リョンソン)駅です。
00:47
金永南首相(右端)をはじめとする幹部たちがお出迎えのために待機しています。午後とはいえ、寒い中、大変です。後ろで脚立に乗って望遠レンズを構えているカメラマンが女性です。北朝鮮公式メディアのカメラマンはたいてい男性なので珍しいです。
01:15
金正恩・李雪主夫妻が駅に入ってきて、見送りの幹部たちに挨拶をします。
02:40
幹部たちが深々とお辞儀をする中、専用列車の開け放った扉から手を振る将軍様。照明がすごい。
02:47
手を振る将軍様の右後ろにいるのが妹の金与正という報道もありました。
03:00
最後尾あたりにある車両、妙にゴツゴツしています。通信機器が載っているのでしょうか。今回の訪問には李洙墉、金英哲、朴泰成、李容浩、努光鉄、李一煥(部長)、崔東明(部長)を始めとする人々が同行しました。

1月8日

04:13
丹東駅に到着、宋濤 中国共産党対外連絡部長の出迎えを受けます。左端の花束を金正恩から受け取るために待機している金与正も見えます。
04:43
列車内で会談をします。いわく「和気あいあいとした雰囲気」で行われたそうです。
06:23
現地時間1月8日午前10時半、北京に到着しました。映像では午前11時頃到着したようです。
06:40
北京駅で王滬寧 中国共産党中央政治局委員と蔡奇 北京市党委員会書記が出迎えます。その後、天安門の前にある長安街を通って釣魚台迎賓館に移動します。
09:10
宿泊先となる釣魚台迎賓館で王滬寧 中国共産党中央政治局委員と蔡奇 北京市党委員会書記、宋濤 中国共産党対外連絡部長が出迎えます。前二者は北京駅で、宋濤は未明に丹東駅で出迎えています。どうやって先回りしたんでしょう? 丹東からは高速鉄道や飛行機を使えば先回りできますが。
10:27
8日午後5時半、習近平・彭麗媛が人民大会堂にて金正恩・李雪主夫妻を出迎えます。
12:17
金正恩と習近平がそれぞれの政権幹部たちに挨拶をします。習近平は他の幹部とは片手で握手しましたが、金与正とだけは両手で握手をしています。重要人物であることが伺えます。
13:46
儀仗隊の閲兵式が人民大会堂の中で行われました。冒頭に国旗に一礼した習近平、金正恩の両国指導者。
15:42
首脳会談の様子です。北朝鮮側は金正恩、李洙墉、金英哲、李容浩が、中国側は習近平、王滬寧、丁薛祥、楊潔チ、王毅、宋濤が参加しました。
23:28
習近平の主催で歓迎式典が開催されました。場所は人民大会堂です。
34:25
習近平、金正恩が挨拶のスピーチを行い、出し物がありました。宴も酣のうちに終了しました。最後に金正恩は習近平に一礼します。礼儀正しいですね。

1月9日

35:22
午前、漢方薬製造企業である北京同仁堂のため、宿舎である釣魚台迎賓館を出発します。お出迎えに来たのは王滬寧と宋濤。
36:28
漢方薬製造企業である北京同仁堂を見学します。製造方法や経営状況についての説明を受けたようです。
38:11
満足して帰ります。帽子をとって挨拶をします。出口には目隠しのテントが張ってあります。
39:00
一度、宿舎である釣魚台迎賓館に戻ります。スタッフに挨拶をして、再度出発します。
39:40
北京飯店に行き、習近平と最後の首脳会談を行います。首脳会談のあとは午茶(アフタヌーンティー)を楽しみました。「家庭的な雰囲気」の中、行われたそうです。
43:09
午後3時、北京駅から帰途に就きます。お見送りには王滬寧 中国共産党中央政治局委員と蔡奇 北京市党委員会書記、宋濤 中国共産党対外連絡部長が来ました。将軍様の隣で顔を出す存在感のある女性は通訳(おそらく)です。

1月10日

43:36
深夜、丹東駅に到着し、列車内で宋濤 中国共産党対外連絡部長や鉄道部幹部と会談を行います。車内で習近平に宛てた親書を宋濤に渡します。北京から丹東まで高速鉄道でも6時間ほどかかるので、客車ならもっと夜遅くになったでしょう。北京駅で見送ったのにさらに国境まで見送りに来た宋濤は大変だったと思います。
44:33
お互い抱き合ってお別れです。また会うことを約束します。感動的なシーンです。金正恩の右奥には金与正の姿も見えます。6号車が専用車である可能性が一番高いですね。
45:29
行きとは違い、帰りは平壌駅に到着します。駅には「敬愛する最高領導者金正恩同志万歳!」というスローガンがかかっています。
48:00
午後3時、列車が到着します。金永南を始めとする幹部たちの出迎えを受けます。老人は口が臭いから手で覆うように、という指導を守る幹部も散見されます。
48:30
専用車で平壌駅を出発します。これにて、一連の中国訪問は終わりました。


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世界の書店

中国の書店事情


中国の書店

中国の書店といえば国営新華書店です。大規模だし品数も多いです。おそらく最大のものは北京の西単にある大書城でしょう。2010年代前半に行ったときは店内に耳の聞こえない人たちのための募金を集める人たちがいましたが、いまはそういう寄付金詐欺まがいの人たちはいなくなりました。

中国は経済大国になったとはいえ、日本と比べると物価は安いです。しかも印刷物は版を作るのが高く、刷るのは安いので大量印刷するほうが1冊あたりの単価が安上がりになります。物価安な上に大量に印刷する中国では必然的に本はかなり安くなります。

古典や辞書のたぐいはたくさん出ているし安価で買えます。ただほぼ全て簡体字なので、慣れないと違和感があります。そもそも漢文を簡体字で読む必要性も感じられませんし…。

新華書店は国営の書店だけあって、党大会のあとは報告書が平積みされる一方でほんとうの意味で面白い本は出回っていません。ちゃんと在庫管理がされています。

新華書店の他にも独立系の書店もあります。北京だと万聖書園や三聯韜奮が有名です。近年は当局の締付けが厳しく、いつまで生き残れるかわかりません。ただ、これらのお店には新華書店とは違った品揃えの本が置いてあって興味深いです。

独立系書店の一つ、PAGEONE。おしゃれ系本屋

その他、中国では大学等が出版部門を持っているため、北京語言大学には語学書が、中国社会科学院には社会科学関連書が揃った書店が、民族出版社の書店には各民族の言語で書かれた本まであります。また、古本屋といえば中国書店が有名チェーンです。北京市中心部にはあまりないですが、少し郊外に行くとあります。

民族出版社

ただ、本に限ったことではありませんが、中国では国土が広大で移動が大変なこともあり、ネットショッピングがものすごい勢いで広まっています。おそらく国営の新華書店や研究機関、出版社付属書店は大丈夫かと思いますが、それら以外の民間の書店が経営的にいつまで生き残れるのかは不透明です。


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中国 中国朝鮮ウォッチ

中国共産党の序列



中国共産党内の序列はあるのですが、あまり明らかにされません。日本語で比較的まとまっているのはWikipediaの記述です。ここでは最新の情報を随時更新していきます。(2019年10月1日の軍事パレードでもこの序列が使われました。)

中央政治局常務委員会委員(チャイナセブン)
中央政治局委員


中央政治局常務委員会委員(チャイナセブン)

序列 名前 肩書 備考
1 習近平 総書記、国家主席、中央軍事委員会主席  
2 李克強 国務院総理  
3 栗戦書 全国人民代表大会常務委員会委員長  
4 汪洋 全国政治協商会議主席  
5 王滬寧 中央書記処書記  
6 趙楽際 中央規律委員会書記  
7 韓正 国務院副総理  
7.5 王岐山 国家副主席

中央政治局委員

序列 名前 肩書き 備考
8 丁薛祥 中央書記処書記長、中央弁公庁主任  
9 王晨 全人代常委会党組副書記、全人代常務委員会副委員長  
10 劉鶴 国務院副総理(科学技術、工業、金融担当)、中央財経委員会弁公室主任  
11 許其亮 中共中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席  
12 孫春蘭 国務院副総理(教育、文化、衛生、体育、退役軍人事務担当)国務院党組成員、  
13 李希 広東省委書記  
14 李強 上海市委書記  
15 李鴻忠 天津市委書記  
16 楊潔篪 中央外事工作委員会秘書長兼弁公室主任  
17 楊暁渡 中央書記処書記、中央紀律検査委員会副書記  
18 張又俠 中共中央軍委副主席、国家中央軍委副主席  
19 陳希 中央書記処書記、中央組織部部長、中央党校校長、国家行政学院院長  
20 陳全国 新疆ウイグル自治区党委書記  
21 陳敏爾 重慶市委書記  
22 胡春華 国務院副総理(農林、水利、商務、税関担当)  
23 郭声琨 北京市委書記  

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自由に死ねない江沢民


峯村健司(2015)『十三億分の一の男 中国皇帝を巡る人類最大の権力闘争』小学館

芹が歌った「四季の歌」は中国でも流行し、胡は日本語で歌えるほどの大ファンなのだそうだ。(本書 p.154)

(江沢民は)終始ご機嫌な様子で、「日本館は大変よろしい」と日本語でおっしゃっていました。(本書 p.161)

「全国から数十人の若くて健康な軍人の血液を集めて総入れ替えもしました。軍内には江氏の影響力が根強く、亡くなってもらっては困る幹部がそれだけいますから」(本書 p.193)

「周永康らの摘発の話を聞いた江沢民があわてて習に電話をかけて『刑事責任は重すぎるので、寛大な処分にしてあげてほしい』とお願いしたそうです。すると信じられないことに習は何も答えずに一方的に電話を切ったのだそうです」(本書 pp.284-285)

中国では人類最大の権力闘争が行われています。

8600万人の党員を誇る中国共産党は世界最大の官僚組織で、党官僚のトップになれれば国、党、軍のトップになることを意味します。政治家がトップを務める民主主義国家とは違いますね。

しかも、決定プロセスは一切が非公表、会議が行われたことすら公にされません。情報公開とチェックを根幹とする民主主義国家とは違いますね。

そうした秘密のベールに阻まれた中国政治を、ボーン・上田賞を受賞した記者が明らかにしていきます。ハーバード大学に留学していた習近平の一人娘に突撃取材したほか、中国政府高官の愛人たちが住むアメリカの「二号村」にも行くなど、米中を駆け巡って取材を重ねます。

中でも注目は習近平が国家主席に選ばれた経緯を明らかにした点です。熾烈な権力闘争の末、習近平は漁夫の利で国家主席の座を射止めました。能力、実績ともに李国強の方が勝っていたにもかかわらず。多くの業績を上げた李国強はその分、敵も多かったのです。一方、目立った業績はないものの、部下の話をよく聞く習近平には敵が少なかったことが一因とされました。

しかし、それも要素の一つです。江沢民、胡錦濤といった過去の国家主席たちを中心とする派閥争い、薄熙来を首謀者とする新中国(1949年の共産党政権成立以降)最大規模のクーデター計画など、さまざまな要因が絡んでいたことを、地道な取材で明らかにしていきます。現在、そして習近平一人が強大な権力を持つようになりました。著者は派閥争いも無くなり、また一人に全権が集中する現状が逆に危険なのでは、と警鐘を鳴らします。

一方で、私たちの知らない指導部の一面も明らかにされます。江沢民は日本語がかなり上手で歌も歌えること、胡錦濤は1984年10月に3000人の日本人青年を中国に招いた事業の責任者だったことなど、彼らは意外な形で日本とつながりがあったことは初めて知りました。

また、中国の汚職は桁違いで、後ろ盾を失うと困る人が大勢出ます。そのため、現在90歳を超えて定期的に危篤説の出る江沢民も(2017年も出ましたが人民日報にある軍高官の葬式への参加者として名前が出て公式には打ち消されました)、自由には死ねません。血液を全部入れ替える延命措置をされます。そうしないと、困る人が続出するようです。元最高指導者ですら自由のない様子に、中国の現状が垣間見えます。



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科挙はカンニング・贈収賄・幽霊まで勢ぞろい


宮崎市定(1963)『科挙 中国の試験地獄』中央公論新社

「年は幾つだ」
「名簿には三十歳と書いてあるはずですが、本当は五十四歳になります」
「何回試験を受けたか」
「二十歳の時に受けはじめて今度で二十何回になります」
「どうしてそんなに長く合格できなかったか」
「どうも文章がまずいのでいつも落第ばかりしていました」
(本書 p.94)

「亡霊なら出てこい」
というと、
「出て行ってもいいが、決して私の姿に驚きなさるな」
とよくよく念をおしてから、この亡霊が目に前に姿を現わした。それは青い顔から血がしたたる、見るもすさまじい形相である。
(本書 p.111)

中国の科挙はとてつもなく難しい試験で、一生かけても無理な人が続出した。私たちはそう思い込んでいます。

確かにシビアだったようで、根を詰めすぎて精神に変調をきたし、夜通し続く試験で幽霊と遭遇した人たちの話も多くあります。逆に善行をして恩返しをしてもらった人もいます。カンニング、試験場内での答案代筆業、贈収賄、神や幽霊など、何でもありの試験でした。

しかし、1300年続いた科挙の初めのころは、貴族の力をそぐために王は多くの官僚を必要としました。そのため、科挙の試験も比較的緩かったそうです。もっとも、時代が下ってくるとやっぱり競争率が上がります。しかしよく考えると、30代で受かると若い方、などと言われる試験の浪人を養えるだけの財力がある一家です。もともと、選ばれた人たちのための試験だったようです。

現に田舎の試験を受けた後、都会に出て試験を受けなくてはいけません。受かるたびに謝礼や振る舞いをしなくてはならず、その出費は多大なものに及びます。最終的に官僚になればいいとしても、なれなかったら大損です。だけどそこは中国、何度もある試験の途中まで受かった人は官僚の秘書をやったり、塾講師をやったりして生きていく方法もあります。ただ、そもそも財力のある人たちばかりなので、そんな心配はあまりしていないようですが。

結局、この熾烈な競争は、現在の中国にも受け継がれているように見えます。中国の高考(大学入試)はまさに地方から都市まで試験を受けに行く、科挙そのものです。トップの受験生は科挙のトップの人と同じく状元と呼ばれ、公表されます。そして李克強は状元でした。まだ試験エリートが統治する国です。試験エリートではない人が統治する日本と、どちらがいいかは考えものですが。



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北京の永田町・中南海にある秘密の地下鉄


朝日新聞中国総局(2013)『紅の党 完全版』朝日新聞出版

薄熙来事件が中国の権力構造を解明する千載一遇の好機だという確信は、あった。ただ、これほど「第五世代」の人事がもつれ、指導部の混乱が表面化する未曽有の事態を招くとは、想像を超えていた。
(本書 p.11)

中国の政策決定にも関わる党関係者の一人は、今から約40年前の経験を明かす。
「中南海から人民大会堂まで、地下鉄に乗った」
(本書 pp.295-296)

薄熙来の失脚という切り口から中国の政治に切り込んだ本です。あの親中的な朝日新聞をしてもここまでしか無理だったかと思わせる箇所も多いです。

一般的には親中的なことで知られている朝日新聞ですが、やはり中国の政治の内部に切り込もうとすると厚いベールに阻まれます。たとえば共産党青年団への取材は、団員とのインタビューには成功したものの、彼らが具体的にどのような活動をしているかまでは踏み込めませんでした。

ただ、さすがは中国。公開されていない情報も人づてに聞いていくと意外な出口に突き当たることもあります。党幹部の親せきが経営している企業への突撃取材や労働教化所の写真、中南海と人民大会堂を結ぶ地下鉄の噂など、中国の新聞などでは語られない話も出てきて興味深く読めました。

最終的には取材団の目指した香港の新聞への引用までなされました。今後も、朝日新聞の中国報道には期待したいです。



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中国人は快楽に向かう?


竹内実(2009)『中国という世界-人・風土・近代』岩波書店

-チュウゴクはどうなるのですか。
たしかに、興味のある問題である。
ひとから質問されるまでもない。自分でもすぐには答えが見つからない大きな疑問で、自縄自縛になる。問題を設定するもの難しい。
(本書 p.3)

初代のイギリス領事、バルフォアは、「条約」が締結されると、とり急ぎ上海に赴いたが、ホテルなどあるはずはない。県城内に家を借りて住むうち、知らない他人が入りこみ、好寄の眼をかがやかせて、自分の一挙一動を見守るのに気が付いた。
家主の姚(タオ)という広東人が、入場料をとって見せ物にしていたのだった。
(本書 p.162)

中国を知るための入門書です。比較的薄くて読みやすいですが、これまで中国を全く知らなかった人も、中国を何度か行ったことがある人も、学ぶところのある本になっています。

著者は本書の中で中国の向かう先は「快楽」であると述べています。集団で旅行してポーズを決めて写真を撮る、爆買いをする、といった中国人の一側面を考えても、集団で楽しく過ごすという側面から考えたら彼らの思考様式が理解できるかもしれません。それが、周りにとっていいかどうかはさておいて。

翻ると日本はどうでしょうか。団体旅行も減りました。みんなで騒ぐことも、中国と比べて少ないように感じます。もう一つの対立軸として、「快適」が見いだせるかもしれません。

日本は「快適」な国です。ネットも自由だし、高速の自動改札やテレビゲーム、ウォシュレットが開発されたのも日本です。宅配サービスも早いし、アニメや漫画などのサブカルもすそ野が広いです。いずれもみんなで楽しさを共有するものというより、個々人のストレスを軽減する、一人で楽しむものです。大勢で快楽を共有するとともに、個人の快適を追及する方向に行っているのではないでしょうか。

中国は快楽に向かう、という考え方は確かに一つの見方だと思いました。

私も中国に赴任するときに買いました。