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アドラー心理学でお悩み解決

私たちは私たちが生きているこの世界に所属し、その一部でああります。アドラーは、このことを「全体の一部」という言葉で表現しています。しかし、人は世界の一部であっても、その中心にいるわけではありません。

本書 p.49

遠距離であろうとなかろうと、会える時はその時を楽しみ、次のことを考えないということが大切です。

本書 p.103

本書はおそらくカウンセラーをやっていると思われる著者が、長年のカウンセリングの経験と、アドラー心理学の考え方を合わせて、一般的な悩みにこたえる本です。新聞や雑誌にあるような短い回答ではなく、時には数ページにも及ぶ回答を書いており、読みごたえがあります。

アドラー心理学とはアルフレッド・アドラーというオーストリア出身の精神科医が提唱した心理学で、個人心理学とも呼ばれます。

Wikipediaを読むといろいろと難しい話があるみたいですが、以下の考え方が基本的な路線になっているかと思います。

  • 今あることに集中する
  • 変えられるのは自分だけ

上記の考え方を中心に著者も悩みを解決していきます。

親子関係や恋人との関係、友人関係がうまくいかない。原因は過去にいろいろなことがあったからかもしれません。しかし、過去は変えられません。そして相手も変えられません。変えられるのは今、ここからのことと自分自身だけです。

だからこそ、うまくいかない関係の過去の原因を探るのではなく、今を大事にし、初めて会ったときのように丁寧に接する。自らを変え、今を大切にする。そうするとまた違った光が見えてくるかもしれません。

悩みのある人は本書を手に取ってみるのも一つかと思います。

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米中対立のはざまに船出した「手抜き」の菅政権

手嶋 (中略)超大国アメリカは、じつに様々な問題を抱えています。アメリカ版永田町政治のような腐敗も見受けられます。深刻な人種間の対立も抱えている。しかし、ことアメリカ大統領を選ぶ過程では、これまで大がかりな不正が行われた例はありません。

本書 p.87

佐藤 (中略)今の日本の法律では、ダミー会社を使えば、簡単に戦略上の要衝を買えてしまう。それを規制する法律はありません。こうしたケースでは、一般の官庁では手も足も出ない。ところが公安調査庁は、水面下で進行するこうした事態を調査し、精緻な情報を取りまとめて官邸にあげることができる唯一のインテリジェンス機関なんですよ。

本書 p.196

本書は前回の『公安調査庁 情報コミュニティーの新たな地殻変動 (中公新書ラクレ)』に続く手嶋龍一と佐藤優による対談本です。本書では日本を取り巻く現在の国際社会の中、菅義偉政権誕生で日本がどういう方向に行くのか議論しています。

現状、菅政権は安倍政権の外交方針を受け継ぐとしていますが、肝心の安倍政権の外交方針とは何ぞや、となると見えてきません。北方領土交渉も行き詰まり、北朝鮮による拉致被害者の話も止まったままです。

さらに菅政権は政治的空白を生まないため、という理由から自民党総裁選を経ず「手抜き」で成立しています。アメリカ大統領選挙は1年にわたる熾烈な選挙活動を勝ち抜いたものだけがなれます。民主主義にはつきものの面倒な手続きを踏んで、ちゃんと選ばれてきています。日本とアメリカの民主主義の差を見せつけられる気分です。

現在、日本の周りにはアメリカを中心とした「日米豪印同盟」と一帯一路構想に代表される「大中華圏」のつばぜり合いが起きています。新型コロナウイルスのワクチンをめぐって、中国が学術都市ヒューストンで諜報活動を行った結果、アメリカはヒューストンの中国領事館を閉鎖させました。そのような生き馬の目を抜く外交戦が繰り広げられている中、安倍政権のときより機動的な外交を菅総理はできるのか。本書を読むと不安が出てきます。

安倍総理はトランプ大統領とも馬が合い、プーチン大統領ともいい関係を築いていました。中国の習近平国家主席とはコロナがなければ国賓としての来日を実現させていたはずで、バランスを取りながら外交をしていました。そうした政治家個人による人脈と、安倍政権時代の官僚が変わったことで、菅総理はまた新たな外交戦略を迫られています。

コロナがあるから外交に目立った動きはありませんが、佐藤のいう「安倍機関」を引き継がなかった菅政権には一抹以上の不安が残ります。

なお、佐藤の予想では菅総理は自身の政権に疑問を抱かれないよう選挙をする、おそらく2021年1月までに行うとなっていましたが、その予想は外れました。