佐藤優(2014)『元外務省主任分析官・佐田勇の告白―小説・北方領土交渉』徳間書店
「僕は作家だから、警鐘を鳴らす作品を書く。論文やノンフィクションではなく、小説だ。(後略)」(本書 p.265)
本書は『読楽』に「外務省DT物語」として連載されていた小説を書籍化したもの。中身は暴露話っぽいところもあるが、いたってまじめな動機(を装って)で書かれている。筆者の最終的な目的は、北方領土交渉の前進だ。そのための障害を取り除く地ならしの役割を本書に担わせている。
北方領土の返還はどう行われるのがいいのか。主義主張ではなく、外交の実務経験者として著者が描くのは実現可能性が一番高い案だ。これを読むと、日露双方の外交担当者が真摯に向き合い、あとは政治決断さえあれば北方領土交渉は大いに前進すると思える。
あくまでもフィクションという体裁にしているが、気のせいかよく読めば分かるような偽名を使っている。が、それは気のせいだ。鯉住俊一郎や都築峰男が小泉純一郎や鈴木宗男かと思ってしまうのは、あくまでも読む側の深読みなのである。深読みだけど、本書の目的とはあまり関係のないところで不倫関係(?)を暴露されている外務事務次官がかわいそうな気がした。純愛らしいから、いっか。
「北方領土返還の実現可能な案」への1件の返信
[…] 山学院大学名誉教授)だ。ちなみに筆者が徳間書店から上梓した『外務省主任分析官・佐田勇の告白-小説・北方領土交渉』には、赤間田繁樹メソジスト大学教授という妖怪教授が出てく […]