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20ヵ国語をマスターした日本人

本書は『外国語の水曜日―学習法としての言語学入門』の著者としても知られる言語学者、スラブ語学者の黒田龍之助の愛読書で、あちこちの出版社に持ち掛けてようやく再販が実現したらしいです。その新聞記事を読んでから注文しましたが、もうすでに第3版でした。筑摩書房も大喜びでしょう。

本書は20ヵ国語がペラペラになった通訳者、翻訳者の種田輝豊さん(1938-2017)の自伝的語学学習経歴書です。

本書によれば種田さんは中学時代にハマった英語のほか、フランス語、スウェーデン語、フィンランド語、ドイツ語、ロシア語、オランダ語、中国語、イタリア語、デンマーク語、ノルウェー語、アイスランド語、ペルシャ語、トルコ語、スペイン語、ポルトガル語、古典語(ラテン語、ギリシア語)、チェコ語、インドネシア語、ルーマニア語、朝鮮語、アラビア語を学んだとのこと。

おそらく古典語、朝鮮語、中国語は自在に操れないような感じですが、それでもこれだけのヨーロッパ語を押さえているのはすごいことです。インド・ヨーロッパ語族の言語だから多少の類似性があるとはいえ、アイスランド語とイタリア語は相互理解不可能です。さらに黒田のあとがきによれば、本人が後年一番得意としたのはここに書いてないスペイン語だというのだから驚きです。

ざっと見る限りでも入門書はドイツ語は関口存男のを、アラビア語は井筒俊彦のを使っていて、そりゃあやる気があれば身に着くのが早いだろうなと思わせます。

肝心の語学学習方法ですが、これもまた根性の一言です。まずはアメリカのペンフレンドと文通をする、気になる表現があったら覚えていく、500の例文を覚える、学校にやって来るGI(駐留米軍)と話して発音を教えてもらう、ギリシャ大使館に連絡してギリシャ語のできる留学生を紹介してもらって録音する、ミスアイスランドにお願いしてホテルでアイスランド語を録音する、映画館に通って気になるフレーズがあったら録音してあと何度も聞き返す(今やると著作権法違反です)、などなど今でも使える方法もあれば、今では使えない方法やずいぶん迷惑な方法もあります。

しかも東京外国語大学在学中は大学にはあまり行かず、外国人の集う喫茶店などでいろんな言語で交流をして言語の腕を磨いたというのだから驚きです。

やっぱり語学は根性と異国への愛情なのだな、と思わせる一冊でした。

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選挙協力で権力を狙うしたたかな共産党


「知の巨人」が暴く 世界の常識はウソばかり 単行本(ソフトカバー)

佐藤 地方には、地道に土建屋をやっていたけれどお、土建屋はもうダメだから、介護施設でもカラオケバーでもパン屋でもなんでもやろう、というコングロマリットがたくさん生まれています。そういう経営をしている人は、船井総研のファンです。

本書 pp.37-38

副島 ダボス会議への日本人の招待状は、竹中平蔵が許可を出していると言われている。日本の首相にすら竹中平蔵が許可を出す。だから竹中平蔵が日本国の代表です。いつも民間人有識者として動き回っています。公人になったら逮捕される恐れがあるからです。

本書 p.172

佐藤優と副島隆彦の対談本第5弾だそう。世界情勢を見ていろいろと話していますが、話題の中心の一つは日本共産党です。

人新世の資本論』で話題となった斎藤幸平にも、佐藤優は「旗」(しんぶん赤旗のこと)には気をつけろ、といったようです。現在、佐藤優は佐高信と名誉棄損で裁判をしているほか、共産党への批判も多く書いているようです。

前者は電事連の広告に出たら1000万円のギャラをもらっているはずだ、という荒唐無稽な話を本の中でされたからだそうで、実際にもらった額は100万円よりもっと少なかったそう。

後者は佐藤は共産党はいまだに「敵の出方論」を堅持していて、暴力革命の可能性があること、立憲民主党などと選挙協力を通じてもしかしたら権力が転がりこむかもしれないこと、そうすると共産党にすり寄る官僚が出てきて、スターリン主義の官僚になることを恐れています。

考えたくもない恐ろしい未来ですが、自民党はもしかしたら野党になるかもしれません。しかし共産党は与党側になると決して権力を手放さないと佐藤は見ています。確かに「しんぶん赤旗」の取材力も、党としての組織力もほかの政党と比べたら強いです。スターリン主義の官僚たちが生まれる未来が来ないことを祈りつつ、選挙に臨むしかありません。