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選挙協力で権力を狙うしたたかな共産党


「知の巨人」が暴く 世界の常識はウソばかり 単行本(ソフトカバー)

佐藤 地方には、地道に土建屋をやっていたけれどお、土建屋はもうダメだから、介護施設でもカラオケバーでもパン屋でもなんでもやろう、というコングロマリットがたくさん生まれています。そういう経営をしている人は、船井総研のファンです。

本書 pp.37-38

副島 ダボス会議への日本人の招待状は、竹中平蔵が許可を出していると言われている。日本の首相にすら竹中平蔵が許可を出す。だから竹中平蔵が日本国の代表です。いつも民間人有識者として動き回っています。公人になったら逮捕される恐れがあるからです。

本書 p.172

佐藤優と副島隆彦の対談本第5弾だそう。世界情勢を見ていろいろと話していますが、話題の中心の一つは日本共産党です。

人新世の資本論』で話題となった斎藤幸平にも、佐藤優は「旗」(しんぶん赤旗のこと)には気をつけろ、といったようです。現在、佐藤優は佐高信と名誉棄損で裁判をしているほか、共産党への批判も多く書いているようです。

前者は電事連の広告に出たら1000万円のギャラをもらっているはずだ、という荒唐無稽な話を本の中でされたからだそうで、実際にもらった額は100万円よりもっと少なかったそう。

後者は佐藤は共産党はいまだに「敵の出方論」を堅持していて、暴力革命の可能性があること、立憲民主党などと選挙協力を通じてもしかしたら権力が転がりこむかもしれないこと、そうすると共産党にすり寄る官僚が出てきて、スターリン主義の官僚になることを恐れています。

考えたくもない恐ろしい未来ですが、自民党はもしかしたら野党になるかもしれません。しかし共産党は与党側になると決して権力を手放さないと佐藤は見ています。確かに「しんぶん赤旗」の取材力も、党としての組織力もほかの政党と比べたら強いです。スターリン主義の官僚たちが生まれる未来が来ないことを祈りつつ、選挙に臨むしかありません。

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格差社会を生き延びるために

副島隆彦、佐藤優(2015)『崩れゆく世界 生き延びる知恵』日本文芸社

副島 きっと次の大統領はヒラリーか、あるいは別の女性でしょう。大きな流れで、次は女性と決まっているようです。ヒラリーが、”女性の時代”を、盛んにブランド化しようとしています。「黒人の次は女性」が標語になりつつあります。(中略)黒人の次は女性で、その次はヒスパニックを大統領にする。それからユダヤ系の大統領が出る。こういう大きなデザインを、彼らはつくります。そして一旦決めたら、巨艦ですからなかなか急に方向は変えられない、と私は見ています。(本書 pp.183-184)

政治・経済の本を多く書いてきた副島隆彦と、元外交官の佐藤優による3冊目の対談本です。

副島隆彦は振り幅の大きな人です。月面着陸はなかったという本で第14回日本トンデモ本大賞を受賞していると思いきや、リーマンショックを予言しています。外れるときも大きいけれど、当たるときも大きい。本書でもずいぶんと飛ばした発言をしています。それに比べて、元役人の佐藤はやはり慎重な物言いをしていたり、対談の話題を変えるなどしています。

本書のポイントは事実関係を追うのみではなく、なぜ彼らは対談したのだろうか、と考えながら問題意識を掴んでいくことです。

生きづらい世の中をどう見るか。生きづらさの原因はなにかを探ることが、本書の対談の目的です。

米国の政治は二大政党ですが、実はそれぞれのハト派とタカ派で組んでいるという話は興味深く読めます。だから同じ民主党でもハト派のオバマは全力で戦争を阻止するが、タカ派のヒラリーはおそらく戦争を始めるだろう、と見立てています。この時代、戦争へのハードルは下がってきていますし、世界経済も縮小の動きが見えていますから、米国最大の公共事業である戦争が出てくるのも時間の問題です。だからこそ、中国との戦争は日本にやらせるために、米国は日本に安全保障関連法案の成立を急かしている、というのは穿った見方な気もしますが…。

しかし、世界的には戦争、そして貧富の格差拡大という流れであることには間違いありません。どこに問題があるかわかると、阻止する方法、または逃げる方法も見えてきます。その問題に対応するために、少し穿って悲観的な見方をするのも、一つの姿勢といえます。