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レビュー

北京の永田町・中南海にある秘密の地下鉄

朝日新聞中国総局(2013)『紅の党 完全版』朝日新聞出版

薄熙来事件が中国の権力構造を解明する千載一遇の好機だという確信は、あった。ただ、これほど「第五世代」の人事がもつれ、指導部の混乱が表面化する未曽有の事態を招くとは、想像を超えていた。
(本書 p.11)

中国の政策決定にも関わる党関係者の一人は、今から約40年前の経験を明かす。
「中南海から人民大会堂まで、地下鉄に乗った」
(本書 pp.295-296)

薄熙来の失脚という切り口から中国の政治に切り込んだ本です。あの親中的な朝日新聞をしてもここまでしか無理だったかと思わせる箇所も多いです。

一般的には親中的なことで知られている朝日新聞ですが、やはり中国の政治の内部に切り込もうとすると厚いベールに阻まれます。たとえば共産党青年団への取材は、団員とのインタビューには成功したものの、彼らが具体的にどのような活動をしているかまでは踏み込めませんでした。

ただ、さすがは中国。公開されていない情報も人づてに聞いていくと意外な出口に突き当たることもあります。党幹部の親せきが経営している企業への突撃取材や労働教化所の写真、中南海と人民大会堂を結ぶ地下鉄の噂など、中国の新聞などでは語られない話も出てきて興味深く読めました。

最終的には取材団の目指した香港の新聞への引用までなされました。今後も、朝日新聞の中国報道には期待したいです。