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レビュー

反知性主義者に勝つためには

佐藤優(2015)『知性とは何か』祥伝社

反知性主義を大雑把に定義するならば、「実証性や客観性を軽視もしくは無視して、自分が欲するように世界を理解する態度」である。(本書 p.16)

英国政府がウェブサイトに掲載した「スコットランドが英国に残留すれば、住民一人あたり二八〇個のホットドッグを食べることができる」というのは、客観的な裏付けのある数値なのであろう。しかし、その数字を示すことで、スコットランド人の気運を英国残留に傾かせることができると考えた時点で、知性の使い方を誤り、反知性主義の罠にとらえられてしまったのである。(本書 pp.57-58)

佐藤優本人も書いている通り、ある種の危機感を持って書かれた本です。

今の日本には反知性主義が大手を振って歩いています。反知性主義とは引用したように、客観的な数値や事実を前にしても動じず、世界を都合の良く解釈する態度をいいます。

だから安全保障法制の話にしても、議論をせずに議論をした形にして時間数だけ稼ぎ、無理に通そうとしています。本来であれば憲法解釈すべきところを、閣議決定や法律の解釈変更などで押し切ろうとしています。こうした態度は半ば独裁のようなもので、非常に危険です。

危険なのは分かっていますが、残念なことに反知性主義は止められないのです。反知性主義者はその名の通り知性を重要視していません。だから客観的な数値や事実を示しても、「それがどうした」「気合で乗り越えろ」でなんとかなると思い込んでいます。彼らとは、基本となる土台が共有できないために、対話の余地がありません。しかも、イスラム国にあるように、彼らは暴力の行使に抵抗がありません。

ではどうやって止めるのか。知性を持つ人たちが集まって心、言葉、力を駆使して、反知性主義者たちが活躍できる場を狭めていき、実社会への影響を最低限にさせるしかない、と佐藤は語ります。もどかしいし、時間もかかります。だけども、それ以外の妙案が確かに今のところ、思い浮かびません。

ちなみに、冒頭で出てくる「ナショナリズムや愛国心なんてくだらないし、面倒くさいですよ」といったのはおそらく堀江貴文のことでしょう。インターネットの理念に沿った発言です。


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