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レビュー

第三者が世界を救う

佐藤優(2015)『世界史の極意』NHK出版新書

宗教である以上、誰もが無意識であれナショナリズムを自らのうちに抱えている。その暴走を阻止するために、私たちは歴史には複数の見方があることを学ばなければいけないのです。(本書 p.163)

したがって、宗教的価値観を中心とした結びつきには、民族やナショナリズムを越えていくベクトルがあることが認識できます。(本書 p.221)

世界史の極意 (NHK出版新書 451)

佐藤優が今を生きるビジネスパーソンに歴史を分かりやすく教える本。外務省で勤務して自らがキリスト者である著者は、宗教や国際問題を語るにふさわしいプロ中のプロだ。

現代社会はグローバル化が行き着いた先として、一種の危機に瀕している。その危機とは、戦争の可能性だ。

ウクライナやイスラム国を見ても分かる通り、世界には戦争の種があちこちで見えるし、紛争は現在進行形で起こっている。おそらく、これからそう遠くない未来の間には世界大戦は発生しない。だけど世界のどこかで継続して紛争が起きている状態が続くと予想される。これからは戦争をさせない社会(世界)を作ることが鍵となってくる。本書はそのために必要な知識を授ける。

著者はまず第一章で世界全体の傾向を見て、そこから帝国主義と宗教問題に焦点を絞る。第二章で帝国主義的傾向が強くなること、第三章で宗教問題について語る。いずれにせよ問題は、世界を第三者の視点で見ることで解決に近づく。帝国には帝国と植民地の視点から、宗教には他宗教の視点から見ることで、全体を把握して解決のいとぐちの可能性を見出す。

世の中の問題は賢い人が一気に解決するのではない。一人ひとりの理解の深化で少しずつ解決へと近づくのだ。


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