人事を知って組織で生き抜く


実は、人事は組織において最も危険な仕事なのです。

(本書 p.47)

職場を息しやすい環境にする裏技として、自分が属しているラインではなく、斜め上の立場の上司で、信頼できる人を作っておくこともお奨めできます。

(本書 p.233)

鈴木宗男事件で外務省を追われた作家、佐藤優が自身の経験と日本の文学作品を通して組織で生きていく方法を指南する本です。ここでの重点は「どうやったら組織の中で生き延びれるか」です。潰れた人は「逆境を生き抜く方法」を読みましょう。

佐藤は職場で働いている人を以下の4つに分類します。

  • 仕事好き・生産力高=ハイパー
  • 仕事嫌い・生産力高=ワーカホリック
  • 仕事好き・生産力低=マイペース
  • 仕事嫌い・生産力低=バーンアウト

組織はまずバーンアウトを切り始め、続いて余裕がなくなるとマイペースを切り出します。釣りバカ日誌のハマちゃんがマイペースに該当しますが、彼は気難しい鈴木建設の社長と昵懇の仲なので、彼の人間力を持ってすれば組織の中で生きていけるでしょう。

組織の中で生きていくにはどうすればいいのか? 佐藤はまず、組織はトラブルを起こすものであること、その際のリスクマネジメントとクライシスマネジメントを考えることを強調します。リスクマネジメントは想定できる危機、クライシスマネジメントは想定外の危機に備えることです。実際の動きを自らの経験と山崎豊子『不毛地帯』を例に上げて述べていきます。

『不毛地帯』の主人公、壹岐正は陸軍中佐で大本営参謀を務めてからソ連との折衝にあたり、戦後シベリアで抑留されたあとに帰国、商社に採用されて会長になります。フィクションではあるものの、実際に同じ経歴をたどった陸軍中佐、瀬島龍三をモデルにしていると言われます。壹岐は商社で次期戦闘機選定争いの際に不正に自衛隊の情報を得たのではないかと疑われます。その際、ソ連での取り調べを思い出して自らの責任が追求される危機を乗り越え、結局は別の社員が責任を問われることになりました。

自らの人生がかかったときには何を優先し、どのように振る舞えばいいかを『不毛地帯』から学ぶことができます。

その他、赤穂浪士に組織での忠誠心のあり方を、戦時中の内務班の様子を描いた『真空地帯』では組織における仲間との連帯について具体的に見ていきます。

組織の中で生き延びる術のエッセンスを詰め込んだ一冊です。