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レビュー

異端児が硬直化した社会を変える

佐藤優(2015)『ケンカの流儀』中央公論新社

中瀬 なるほど。佐村河内氏が助かったのは、小保方晴子さんが出てきたから。
佐藤 その前の、みのもんたさんは……。
中瀬 佐村河内氏に救われた。自分が助かるには、次の「生贄」が出てくるのを待って、導火線に火のついたダイナマイトを受け渡すしかないわけだ。(笑)
佐藤 社会に修羅場のエネルギーがある限り、それは必ずどこかで噴き出すんですよ。(本書 pp.226-227)

東京地検特捜部に逮捕されるという修羅場を経験した佐藤優が語る、ケンカの方法の本です。

前回は佐高信と『ケンカの流儀 – 修羅場の達人に学べ (中公新書ラクレ)』という本を出していましたが、こちらは対談本でした。今回は佐藤優一人による書き下ろしです。

本書では著者本人の経験による「やりすぎ」て逮捕された話、あえて厳しい環境を作って自らを鍛えた東京拘置所での話など、少し応用すれば日常生活でも使えそうなエピソードが出てきます。

普通の人は、東京地検特捜部に逮捕されたりしませんからね。

中でも面白かったのが、かもめのジョナサンのお話でした。かもめのジョナサンは飛ぶことを訓練して極めてしまいました。かもめの仲間たちは餌が採れる程度に飛べたらいいと思っていました。だからジョナサンは異端児として追放されてしまいました。しかしジョナサンの教えを受けた一部のかもめたちが彼の教えを継承し、彼がいなくなったあとで彼を神格化し始めます。この物語からは、グループの平均を外れた人たちは異端児扱いされるか神格化され、どちらかの見方に偏ったとき、その偏見を壊すのもまた、グループの平均を外れた人たちであることを物語っています。

私達の身近な組織でも、この考え方は応用できそうです。