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レビュー

学校で教わらない中国の姿

厳家祺、高皋著;辻康吾監訳(2002)『文化大革命十年史』岩波書店

著者はアメリカに亡命した中国人なので、反共産党政権の立場である。それを前提にして読まねばいけないが、それを差し引いてもものすごい内容。

題名にある通り、文化大革命の端緒から、四人組が裁判にかけられるまでを3巻にわたって書いている。上中巻の林彪時代と下巻の四人組(江青時代)とおおよそに分けられている。

おおざっぱに言うと文化大革命とは、一部のグループが仕組んだクーデターだった。

江青・林彪派は毛沢東を形骸化したトップにしたてて骨抜きにし、実質的な国家運営の権限を自らの手に持ってこようとしていた。その動きを察知してか、あるいは天性の嗅覚で嗅ぎ取ったのか、毛沢東は文化大革命を推し進める江青・林彪派とより穏健な劉少奇派を上手に使いこなし、2つの派閥の消耗戦という形に持って行って最悪の事態を免れる。現在の金正日もそうだといわれるが、社会主義国家の指導者にみられるこのしたたかさには舌を巻く。

文芸誌に載った京劇『海瑞罷官』の批判が端緒とされる文化大革命は、文芸界の騒動でおさまるとみられていたが、それが全国民を巻き込んだ政治運動へと拡散していく。その様子が克明に描かれていて、数は力なんだということを思い知らされる。

いつの時代も海外のものを取捨選択、換骨奪胎して自分たちのために取り込むのはいいことだと少なくとも僕は思うのだけれど、それを走資派(資本主義者)の動きだとして批判されていくありさまは、正論の通じない集団心理の恐ろしさを見せつけられる。

甚だしくは国家主席の劉少奇や副総理兼国防部長の彭徳懐といった国家に功労のあった人たちまで、あっけなく批判され、不遇の中で粛清されてしまう。

劉少奇は家に押し入った群衆によって自室に監禁されてしまう。窓のすぐ前に煉瓦の塀を建てられて他の部屋の様子も分からない。そんな中、家族もすぐ隣の部屋で監禁されていて、いつか会えると思いつつ亡くなった劉少奇。家族は他の場所に移送され、前日まで自分の家の使用人をしていた者が監視役となって監禁生活を送るなど、まさに不遇の最後だった。彭徳懐も同様に監禁され、持病の治療をされることなく放置されて亡くなってしまう。

中国を理解する一助になる本。