寄川条路編・大塚直ほか(2007)『メディア論-現代ドイツにおける知のパラダイム・シフト』御茶の水書房
学問の根本問題は言語だという時代に、言語学が成立した。(中略)かつて意識という現象が占めていた地位を言語が覆したが、今度はそれを媒介が覆して、言語から媒介へと重点が移ろうとしている。つまりこれが、言語からメディアへの転回である。(本書 p.8)
言語を認識の前提としてとらえるように、メディアを言語の前提としてとらえることができる。認識や言語を一つのメディアとして、メディア論へと引き戻すのである。(本書 p.8)
本書はおもにドイツにおいて、言語を含むメディアが思想史的にどのように位置づけられてきたかを論じている、見通しのよくなる本だ。かつて、神の啓示(それは自然の中にあると考えられてきた)をより確実に読み取るために、口伝が文字におこされ、誤字をなくすために印刷技術が発達した。そして現代においては、そうして作られた文書から自然に戻ろうという動きがパンクといった音楽や、前衛的な芸術に見えている。
結局は自然と文化の二元論に縛られ続けているんじゃないか、と見える。結局遺伝子技術によって神に飼育されていた人間は、自らを飼育者の立場へと移した。この現実にぶち当たって、「人間の特権」を前提としてきた人たちは行き場を失った。
これからどういうビジョンを描くのか、或いは小さな物語に逃げ続けるのか。我々はどこへ向かうのか。