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レビュー

呪術師になった後の世界

カスタネダ、カルロス 真崎義博訳(1974)『呪術師に成る-イクストランへの旅-』二見書房

「それがどんな決断かなんてことは問題じゃない」彼が言った。「どんなことだってほかのことより重大だとか、そうでないとかいうことはないんだからな。わからんのか? 死が狩人であるような世界では、決断に大小なぞないんだ。避けられない死の面前でする決断しかないんだよ」(p.74)

死というものを意識して、人生をどう生きるか。これがドン・ファンのいう戦士の生き方だ。つい人生が永遠であると勘違いしそうな我々だが、戦士は一瞬一瞬に命をかけて生きる。

本書はカスタネダシリーズの第3弾。主に「世界を止める」ということについて話が広げられていく。ここで言われている「世界を止める」というのは、いつもと違った見方をし始めたら、それを無理矢理理性で理解しようとせずに、そのままの世界を受け止め続ける、という意味らしい。

本書では、真っ暗な中を歩く(走る)方法として、中沢新一の『チベットのモーツァルト』に出てきた風の行者の話とそっくりな「力の足どり」というものが出てきた。これは非常に興味深い。人間の身体のふしぎさを感じる話だと思う。

そうして、ドン・ファンの指導によってどんどん新たな身体の地平を切り開いていくカスタネダの成長がおもしろい。