哲学の歴史の概略を学ぶための入門書です。本書では大学の講義のように1章につき一人の哲学者の代表的著作と思想を紹介し、15章からなっています。
- 第1講 アリストテレス『ニコマコス倫理学』
- 第2講 デカルト『方法序説』
- 第3講 ロック『人間知性論』
- 第4講 ルソー『社会契約論』
- 第5講 カント『純粋理性批判』
- 第6講 キルケゴール『死に至る病』
- 第7講 マルクス『経済学・哲学草稿』
- 第8講 サルトル『実存主義とは何か』
- 第9講 レヴィナス『全体性と無限』
- 第10講 メルロ=ポンティ『知覚の現象学』
- 第11講 フーコー『監獄の誕生』
- 第12講 アーレント『人間の条件』
- 第13講 ロールズ『正義論』
- 第14講 ノージック『アナーキー・国家・ユートピア』
- 第15講 サンデル『リベラリズムと正義の限界』
ご覧の通り、古代ギリシャのアリストテレスから始まり、英米独仏とバランスよく哲学者が紹介されています。文章も会話形式になっており、先生が女子高生、サラリーマン、定年後の男性の3人の生徒に教えていく形で紹介されて行きます。これから哲学を学んでいこうとする人が挫折しない程度の分量、難易度になっています。
- アリストテレス:いかにして人は幸せになるか? -熟慮すべし
- デカルト:思うことこそ自分の本質 -心身二元論
- ロック:悟性が単純観念を複雑観念にしていく ーすべては経験から生まれる
- ルソー:一般意志としてみんなの意見をまとめる ー国民の代表たる政府は国民のもの
- カント:対象は感性を通して直観になり、直観は悟性に思惟され概念に ー認識の取扱説明書
- キルケゴール:自己自身から抜け出せないからこそ絶望する -死に至る病
- マルクス:資本に振り回される労働者を解放し、働きに応じて分配する社会主義、必要に応じて分配を受ける共産主義へ ースミスを乗り越えたマルクス
- サルトル:実存は本質に先立つ。個人の選択は全人類に対して責任を持つ。 ー一世を風靡した哲学者
- レヴィナス:他者のおかげでこそ、私は存在する。 ー他者と私の不公平な関係
- メルロ=ポンティ:身体こそが世界を知覚する。 -デカルトを越えて
- フーコー:身体的刑罰から精神的刑罰へ ー権力とは何か
- アーレント:他者を自由な存在として公的空間に迎え入れる ー言論と説得による政治を
- ロールズ:自由、機会の均等、格差の解消 ー功利主義(最大多数の最大幸福)に代わる正義論
- ノージック:治安・防衛・司法のみの最小国家を提唱 ーリバタリアンの始祖
- サンデル:負荷なき自己(ロールズ)から他者の網の目の中にいる自己へ ー市民的共和主義の伝統の掘り起こし
古代ギリシャから現役の哲学者まで、幅広くフォローしているので学びやすいです。一方、哲学者と言って思い浮かべるヘーゲルに対する言及がない、近年のフランス現代思想やドイツ観念論等についての体系的な学習に対するフォローがないなど、これから哲学の様々な流れを理解する方法について言及がなく、その点は惜しく思いました。