佐藤優(2014)『「知」の読書術』集英社インターナショナル
このように、現在の国際情勢を「帝国主義」という概念を用いて考察できる教養が、危機の時代には求められます。複雑な国際情勢も帝国主義という考え方を当てはめてみることで、立体的に理解できるようになるのです。(本書 pp.66-67)
読書家としての側面もある佐藤優が自身の本の読み方を紹介している。自分の商売道具を紹介しているのだから大胆というしかない。
佐藤がこうした本を書くのは、現代に対する危機感からだろう。強い国が世界を席巻しつつある現代を理解するには、国家とナショナリズム(と民族)に関する知識が必要不可欠であると同時に、近代とは何かを知る必要がある。
近代以降成立した様々な国家を知ることで、民主主義の成立過程や革命の起こり方、独裁の発生が理解できる。佐藤は独裁と民主主義は両立するとして、現代の民主主義国家が独裁に移行しつつあることを指摘する。300人の議会を30人、3人にしても、結局選挙でえらばれる限りは民主主義だ。だから最終的には1人になっても民主主義と言える。独裁と矛盾しない。
本書はエリートを対象にしていない。独裁や民主主義の話は何も国家に限ったことではない。会社や学校といった身近な社会でも起こりうるのだ。だからこそ、強大な権力が吹き荒れる中で生き延びるために、知識が必要になる。電子書籍やネットの有効的な活用方法、語学の学び方を紹介して、教養共同体を作り個人と国家の間の中間共同体を太くしていこうというのが、佐藤のスタンスだ。
仲間がいると安心できる。ブラック企業や独裁政権などの大きな力には、安心できる仲間とともに戦うしかない。