一握りのための本
弟子: 彼の本をちゃんと読んだつもりなのです。
ウチボリ: 彼の本を読んでいるとついその通りだと思っちゃうよね。
弟子: その通りです。だから僕も世界で戦える人材に
ウチボリ: だから落ち着け。そもそもおまえは世界で戦えるのか?
弟子: え?
ウチボリ: 語学は?
弟子: 英語を少々…
ウチボリ: 世界で戦ったことは?
弟子: ありません。
ウチボリ: 本1冊読んだだけで世界を相手に戦うのか?
弟子: …準備不足かも知れません。
ウチボリ: 準備不足どころか、確実にコテンパンにされる。
弟子: 戦ってもないのになぜ言い切れますか!
ウチボリ: もうすでに瀧本の戦略に載せられてるからだ。
弟子: 戦略?
ウチボリ: そう、彼の言うことを鵜呑みにしている。
弟子: はあ。
ウチボリ: ということは、世界でも相手の言うことを鵜呑みにしてしまう。
弟子: はい。
ウチボリ: 海千山千の人たちにとって、本1冊でコロリとなる男はたやすいよ。
弟子: むむむ。
ウチボリ: それに、この武器シリーズはどれだけ売れたか知っているか?
弟子: 30万部を越えるベストセラーです!
ウチボリ: ということは、単純計算でどれだけが読んでいる?
弟子: 30万人…
ウチボリ: 30万人だ。30万人の中で上位層に行ける自信は?
弟子: 大丈夫です、ノリで買ったやつが大半でしょうから。
ウチボリ: お前がいうか! そもそも、この本のネタ元はどこだ?
弟子: 京大の授業らしいです。
ウチボリ: じゃあ、たくさんの京大生も買ってるだろうね。
弟子: そんな、まさか…
ウチボリ: 買ってるだろうね。
弟子: ううっ
ウチボリ: 京大生、東大生を含めた30万人だ。
弟子: やめて…
ウチボリ: 勝ち目があると思うか?
弟子: ううううう
ウチボリ: どうなんだ、勝ち目があると思うか?
弟子: …ありません。
ウチボリ: 加えて、
弟子: 僕はもう瀕死です。
ウチボリ: 京大生、東大生だと読む前にここまで考えるやつもいる。
弟子: 確かに…
ウチボリ: 手にした時点で差はついている。
弟子: 勝ち目はないですね…
ウチボリ: そうでもない。
弟子: えっ
ウチボリ: そうでもない。
弟子: もう一回言って!
ウチボリ: もう言わない。
弟子: ということは、僕でも勝てると。
ウチボリ: 都合よく聞いてるな。
弟子: どっちなんですか!
ウチボリ: 普通の人では勝てないけれど、負けない方法ならある。
弟子: 負けない方法?
ウチボリ: そう、負けない方法だ。
弟子: どういうことですか?
ウチボリ: 土俵をずらすんだ。
弟子: 土俵をずらす?
ウチボリ: 具体的に話していこう。
読み始めたらもう遅い
弟子: この本のターゲットは誰ですか?
ウチボリ: 意識高い系の学生だろう。
弟子: 意識高い系?
ウチボリ: 本当に意識の高いやつは、読む前に知って行動に移してる。
弟子: たしかに。
ウチボリ: 本書は授業の内容だろう?
弟子: 受講生は有利ですね。
ウチボリ: 読み始めた時点で勝負は決まっているのさ。
弟子: じゃあ、どうすればいいんですか!
ウチボリ: もう一度、最初に紹介した『僕は君たちに武器を配りたい』を復習しよう。
『僕は君たちに武器を配りたい』
- トレーダー=とれた魚をほかの場所に運んで売ることが出来る漁師
- スペシャリスト=一人でたくさん魚をとるスキルを持っている漁師
- マーケター=高く売れる魚を造り出すことができる漁師
- イノベーター=魚をとる新たな仕組みを作り出す漁師
- リーダー=多くの漁師を配下に持つ、漁師集団のリーダー
- インベスター=所有する船に乗っている漁師に魚をとらせる
1と2は生き残れない。生き残りたければ3~6のいずれかになれ。
弟子: 3~6になるのも難しければ、どうすれば…
ウチボリ: このうち、リーダーとインベスターは一人じゃなれないだろう。
弟子: たしかに。配下に漁師が必要です。
ウチボリ: その配下の漁師になって使われるしかないんじゃないかな。
弟子: いじわる!
ウチボリ: 本書を読み始めた時点で、使われる側なのはほぼ確定だ。
弟子: もう絶望しかありません!
ウチボリ: まあ早まるな、まだチャンスはある。
弟子: 一体どんな…
ウチボリ: それがさっきの、土俵をずらす話につながるんだ。