米原万里(2010)[1998]『不実な美女か貞淑な醜女か』新潮社
通訳や言語の話を書いたエッセイ集。語学を生業にする人にとっては、とても面白く読める本。
著者の周りが特別なのかもしれないが、下ネタやダジャレがちりばめてあって楽しく読める。
通訳とは一言一句をすべて訳すのではなく、文意を伝えられればいいのだという点には目からうろこだった。日本の大学・大学院では一言一句もらさずに読むよう訓練されるので、驚きだった。もっとも、欧米ではもっとおおざっぱな読み方をするらしいことが、鈴木孝夫・田中克彦(2008)『対論 言語学が輝いていた時代』に書かれてある。
数年前のこと、耳を疑うような発言をした女性人気アナウンサーがいた。(中略)
「私たちは子供を国際人にしたいから、家では一切日本語をしゃべらないことにします。家ではすべて英語で話すようにする」
と自信満々に云いきったのだった。(中略)
自分の国を持たないで、自分の言語を持たないで、国際などあり得るのか。
(pp.279-280)
自身も帰国子女である著者のこの指摘は、大変興味深かった。