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レビュー

やっぱり不明なポストモダン

ジャン=フランソワ・リオタール著, 小林康夫(1986)『ポスト・モダンの条件』書肆風の薔薇

よく言われてるのは、本書によってリオタールはポスト・モダンを形づけた。即ち、大きな物語の衰退と小さな物語への分化を語ったのだと。

知が知であるためには、正当化される必要があって、正当化のためには用いられる言表は学問分野によって変わってくる。即ち、社会学と量子科学では何が「発見」であるかの基準が違って来るということ。学問のタコつぼ化を語っているのだ。

かつて、未開社会では大きな物語の中に生きていて、人々は自らの自由を獲得するために知を適宜使っていた。研究機関とはそういう組織だったのに、いつの間にか知の正当化を追求する機関になってしまった。

そういうことを述べている点が評価されるんだけど、ルーマンとハーバーマスの議論をもとにそれを組み立てているのも、同じぐらい評価されるべき点だと思った。

今から読んだら古く感じる部分も多いけど、短いし、読んでおいて損はない本だと思う。