テロから密輸、財閥運営までやるイランの秘密警察


宮田律(2011)『イラン革命防衛隊』武田ランダムハウスジャパン

一九七九年五月、イラン革命の直後に成立した革命防衛隊は、宗教的イデオロギーを強く訴え、イスラム共和国では最も強力な組織として機能し続けている。この組織は、宗教的性格を強くもつという点で、世界でも例がない軍隊である。(本書 p.22)

シーラーズの市場でぼくの腕をつかんだ彼らは、革命防衛隊だったのか。

イランには二つの軍隊がある。正規軍と革命防衛隊だ。正規軍は旧王制が有していた軍隊で、イラン革命のあと、新政府は彼らを信用せず、新たに自分たちの軍隊、革命防衛隊を組織した。これは当時、アメリカ大使館占拠メンバーでもあったアフマディネジャド大統領の出身母体でもある。

本書ではその革命防衛隊について、筆者の中東での調査と、米英の報道や公式資料から丹念に迫っている。

イラン国内には革命防衛隊とたもとを分かった左翼防衛隊モジャーヘディーネ・ハルグなどの組織もあって、国内組織を叩くために空爆をしているとか、実はドバイはイランの貿易の玄関口となっていて、正規も非正規もどっちも取引が行われてること、革命防衛隊の粛清では90年代でも生き埋めが行われていたことなど、知らないイランがいっぱいあった。

また、シーア派の力を広げるため、イランは革命防衛隊をイラクやシリアに派遣し、訓練を施している。筆者の分析によると、アメリカがイランを攻撃した暁には、イラク以上の惨事となり、各地でアメリカ軍や親米国家の関連施設、イスラエルや同国関連施設が狙われる作戦が立てられているらしい。

本書の理解にはイスラム国家に対する理解が必要となる。イスラム国家では国家以上にクルアーン(コーラン)に忠実かどうかを決める法学者の地位が高い。そのため、法学者がそのイスラム性を否定すれば、国家もなくなってしまう。これがイラン革命だった。そのため、国家に属する軍隊と、クルアーン(コーラン)に忠実な軍隊が共存する。本書では宗教的性格を強くもつ、世界で例がない軍隊と述べているが、国家に属さず、イデオロギー的性格を強くもつ軍隊であれば、他に中国の人民解放軍(中国共産党の軍隊)と朝鮮人民軍(形の上では、国防委員会が最高軍事指導機関だけど)がある。これらを想起すれば、まだ想像しやすい。

事実と分析を書いた書であって、思想的な面にはほとんど触れられていない(十二イマーム学派の説明が少しある程度)。そのため物足りなさはあるが、現段階で得られる資料としては有益だ。イランに対する見方も変わる。