「一億総滑落社会」を変えるために政治家と語る


井手英策、佐藤優、前原誠司(2016)『分断社会ニッポン』東洋経済新報社

前原 まあちょっと愚痴になりますけれども、議員年金が2006年からなくなったんです。(中略)そうすると私は国民年金だけなんです。(中略)議員生活を終えても退職金はない。いったいどうやって生きていくかというのは、私にとっては切実な問題なんですよ。
佐藤 金持ちしか政治家になれないということになっちゃいますよね、逆に。(本書 p.107)

井手 (中略)誰ということはないですけど、明らかに金持ちのボンボンが「格差是正」と言ったらみんなシラッとしますよね。
佐藤 そう。「シャッター街をなくしましょう」って、お前のおやじが創った大会社が商店街を潰したんじゃないかというような話になったらダメなんですね。(本書 p.166)

 井手英策 慶應義塾大学教授、前原誠司 衆議院議員、佐藤優による、日本の現状をいかに良くしていくかをテーマにした鼎談本です。井手は各地を調べて、例えば富山県では女性が働きに出る率が高いが、それは三世代同居に支えられているからだといった、全国に活かせそうな地方の特色を述べています。ただ、三世代同居は今後永続的に維持が可能な制度ではないこと、正社員の配偶者は配偶者控除を受けられるのに派遣社員の夫婦は配偶者控除を受けられないなど、現状の問題点も鋭く指摘します。

 三人とも、減税一辺倒ではなくて、有効活用するのだというアピールをして税をもらえば納税者も納得するのではないか、という議論を多くしています。今後の人口減を前にして、経済成長が見込みづらいとなれば、教育無償化等で充実させ、地域や共同体で助け合って暮らしていく。そうした社会にしていくのが政治の役割であると具体例を出して語っています。前原誠司という政治家が入っているからこそ、議論に真剣味も現実味も増しています。少しは政治を信じていいのかも、と思える本です。

 前原議員は八ッ場ダムの中止から再開で批判されましたが、ダム全体の見直しをして無駄を減らしたことなど、実績はあるのに有権者からは厳しい批判を浴びたなど、政治の厳しさを覗かせる発言をしています。一方で

「国民、特に政治に翻弄され続けてきた長野含め地元の皆さんには、心からお詫びを申し上げたい」(本書 p.197、太字は筆者)

と、県と書くべきところを誤変換している。電子書籍ならしれっと訂正されるのだろうけど、ちゃんと証拠が残るのは紙のいいところですね。

 前原誠司は京大法学部時代、高坂正堯(こうさかまさたか)ゼミに所属していました。弟(*1)の高坂節三 日本漢字能力検定協会理事長・代表理事は同協会の汚職事件(刑事・民事でそれぞれ裁判になった)があったとき非常勤理事でしたが、責任を取るどころか、いつの間にかトップに就任しています。そんな同氏は東京都教育委員在任中にまえはら誠司東京後援会の代表を勤めており、これは地方教育行政法違反であることが指摘されています(罰則規定はない)(*3)。

 清濁併せ呑むのが政治、私達有権者がしっかり見て、意見を言い、判断しなくてはいけません。

 冒頭の引用の「おやじが創った大会社」は某イ○ンのことを言っているのかなと思いました。

*1 【解答乱麻】日本漢字能力検定協会代表理事・高坂節三(産経新聞)
http://www.sankei.com/life/news/140823/lif1408230011-n1.html
*2 財団法人日本漢字能力検定協会について(池坊保子ブログ)
http://yasukoikenobo.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/post-8d56.html
*3 第177回国会 文部科学委員会 第11号(平成23年5月20日(金曜日))
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009617720110520011.htm