高校生に教える本物の知恵


琉球語はビッグデータがないから、琉球語の電子翻訳はできない。そういう意味において、機械が自分で考えることはできないんです。

本書 p.91

でもお金持ちになるのは、そう簡単ではありません。他方で、自分の名誉と尊厳を持って、きちんと生活していけるだけのお金を稼ぐことは、実はそれほど難しくない。

本書 p.106

本書は佐藤優が2018年6月2~3日にかけて沖縄県の久米島高校で行った講演録です。佐藤は母の母校である久米島高校の生徒たちに、これからの世の中を生き抜いていく方法を教えます。

佐藤の母は自らの戦争体験から自分で考える力の重要性を知っていました。だから息子にもちゃんとした教育を受けさせました。戦時中、佐藤の母は沖縄本島で軍属として日本軍の身の回りの世話をしていました。そのとき会った軍人には「(アメリカ軍は)女と子どもは殺さない」「戦争に負けても日本が滅びることはない」と国際法や世界情勢から見た自分の考えを伝えてくれる人がいました。偏差値教育ではない、「自分の頭で考える」教育はこういうところで真の力を発揮します。

これからの日本では経済成長はあまり見込めず、非正規雇用の増加などで不安定な立場の人たちも増えていきます。そういう社会を生き抜いていくには、偏差値教育ではなく、相手の立場を考えられる力が重要だと説きます。幸いにも久米島高校には離島留学の生徒がいて、いろんな立場の子どもたちが交流できる環境にあります。その点はとても羨ましく思いました。

高校生向けだからか語り口はとてもわかり易く、しかし中身はしっかりしています。大人でも十分勉強になる本です。