真の教養は紙の本でこそ身につく


佐藤優(2014)『「知」の読書術』集英社

つまり、教養とは「知識に裏打ちされた知恵」なのです。(本書 p.117)

「電子書籍の外側」にある紙の本が、まだしばらくは基礎教養を身につけるベーシックな手段であり続けるのです。(本書 p.133)

これまでの濃い読書術とは打って変わって、軽めの読書術の指南本だ。

佐藤優のこれまでの読書術は導きの書をいくつか紹介していく『功利主義者の読書術 (新潮文庫)』、知の巨人同士の対談である『世界と闘う「読書術」 思想を鍛える一〇〇〇冊 (集英社新書)』(佐高信)、『ぼくらの頭脳の鍛え方 (文春新書)』(立花隆)などがあるが、本書は断然初心者向きだ。

前半の危機の時代に生き残る方法を書いているのはこれまでもあった。本書の白眉は教養を身に付けるための電子書籍の使い方を伝授している点にある。

インターネットから出た電子書籍派と旧来の紙の本派は折り合いが悪い。両者を橋渡しする階層が日本にはいないからだ。電子書籍派は本をコンテンツとみなすいっぽう、紙の本派は本への愛がある。この温度差はいかんともしがたい。じゃあ紙の本派が愛をこめて電子化すればいいと思うのだが、佐野眞一『だれが「本」を殺すのか』で明らかな通り、日本の出版社が行った電子書籍化計画はいまいちパッとしない。

著者も紙の本派だから電子書籍に重きを置かない。基礎教養は紙の本でしか身につかないと断言する。しかし電子書籍にも利点がある。それは一度に数百冊でも持ち歩けること、電子版限定の良いコンテンツもあることだ。だから紙の本の補完的なデバイスとして電子書籍の利用を薦めている。

これまでの著者はどんな本でも役に立たせられる、という立場からさほど注目されてない本でもその有用性を紹介してきた。電子書籍を薦めるのも、そのスタンスの延長だ。さほど広まっていない電子書籍でも、上手に使えば教養が身につけられる。紙の本派から電子書籍の有用性を冷静に言語化した端緒といえる。