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資本主義の暴走を生き残るには

田原総一朗、佐藤優、宮崎学(2015)『「殺しあう」世界の読み方』アスコム

宮崎 田原さんも僕も早稲田大学だけど、いまや早稲田も金持ちの子弟しかいけなくなりつつある。
田原 昔は、役人だけは貧富の差なんて関係ない、貧乏でも東大に入って大蔵省に行けば出世できる、という話だったけど。
佐藤 いや、中高とカネのかかる進学校に行き、大学でもダブルスクール(予備校や専修学校などにも通う)ができる経済力がなければ、公務員試験にも合格しなくなってきた。
宮崎 カネがないと教育できない、教育がないとカネが稼げない。ということは、貧困が家庭ごとに固定化する。これは深刻な問題です。これまで差別や貧困は社会や本人の努力に寄ってある程度は変えることができた。可変的だったのが、固定的になってしまっている。(本書 p.38)

グリコ・森永の「キツネ目の男」の重要参考人にしてヤクザの組長の家に生まれた宮崎学と、『国家の崩壊』 (角川文庫)で共に仕事をした佐藤優が、田原総一朗の監修のもと、対談を行っています。

宮崎学は共産党でバリバリと活躍していた活動家でした。一方で佐藤は共産党に詰められた経験があるから反射的に身構えてしまう、どちらかというと社会党よりの経歴を持っています。そんな二人の対談を、田原総一朗が朝ナマばりの進行で進めていきます。

この本を読んで逆に驚くのは、彼らの世代(50~70代)の若い頃は金持ちでなくても私学に通えて、教育を受けさせることができて、ある程度社会的な成功が望めたことです。今の時代は受験にも就職活動にもお金がかかります。お金がないと大した教育も、よい就職先もなく、まさに貧困が受け継がれていきます。

世界経済も限界に来ているし、閉塞感が漂っている。資本主義がこれでいいかという問題と同時に、米国が最大の公共事業として戦争に打って出る可能性や、若者を惹きつけて地域部族との関わりを持ちながら生き残っているISの影響拡大など、世界はまさに「殺しあう」時代に突入しています。

この本は具体的な生き方を呈示してはくれません。世界の見方を教えてくれる本です。世界を俯瞰して、急ぎ学び考えながら、私達は生き残り方を見出していかなければならない、そんな生きづらい時代であることを教えてくれる本です。

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