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50代は戦略的に働こう

人生の選択は人それぞれなので一概にはいえませんが、いまのような時代、50代のビジネスパーソンであれば、早期退職ではなく定年まで会社に居続けることを優先すべきだと考えます。

本書 p.40

50代以降の人生で意外に重要になってくるのが友人とのつき合い。学生時代からの友人とは、利害関係を超えてつき合うことができます。

本書 p.128

 本書は60歳を迎えようとする佐藤優が自身の経験から50代の生き方を提案する本です。『40代でシフトする働き方の極意』の続きと位置づけられます。

 50代になると体力もなくなり、会社の出世でも先が見えてきます。役職定年や片道出向で給料も下がる場合もあります。若者からは突き上げられ、上司からは絞られる。いっそ早期退職や転職を視野に入れてしまうかもしれません。

 しかし、50代で転職して成功する人はごく一部です。もちろん、心身に影響が出るなど耐えられない場合はやむをえませんが、損得勘定を考えた場合、定年までの数年から10年の間は耐えて忍んで目立たぬように過ごすのが一番、 会社でも出世の限界が見えてるなら、大きなプロジェクトで目立つようなリスクを避けるべきだと著者は説きます。早期退職も同様です。会社員のいいところは決まった時間は仕事をしているため、お金を使わないことです。早期退職で時間ができると、人はついお金を使ってしまいます。損得勘定で考えた場合、転職や退職はしないほうが有利です。

 また、50代にもなると定年後の暮らしを見据えるほか、親の介護や子どもの自立など、これまでとは違った人生の局面が出てきます。そうしたときに頼りになる人間関係は会社の利害関係ではなく、学生時代からの友人関係です。利害関係もなく仲良くなれ、思春期を共に過ごした人たちとはまた仲良く過ごせます。また、いろんな業界に就職した人、すでに親の介護などを経験した人がいることから、さまざまなアドバイスを受けることができます。

 定年後を見据え、仕事中心の人生から自分や大切な人を中心とした人生へとかじを切り始めるのが50代です。備えあれば憂いなし、若いうちから読むに越したことのない本です。

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上司に潰されない生き方のすすめ

佐藤優(2014)『「ズルさ」のすすめ』青春出版社

現代の先進国は自由平等や基本的人権が基本。しかし一方、厳しいビジネス社会の競争原理の中で、それぞれの職場においては軍隊的な上下関係がより先鋭化しているのです。(本書 p.203)

「ズルさ」のすすめ (青春新書インテリジェンス)

本書は『人に強くなる極意』の続編、発展編といえる。

組織の中で生きるしかない人々に、最小限のストレスで生き抜く方法を教える。外務省という大きな組織で生きてきた佐藤の言い分には説得力がある。

組織の中で長年生きていると、自分が使用者になれるかどうかが見えてくる。そして、大半の人がなれない。

ある程度の見切りがついたところで考えるべきは、いかに出世するかではなく、いかにストレスなく生き抜くかだ。組織は基本的に個人を搾取して利益を得る。そこでは何らかの無理が生じ、ストレスが出る。溜めすぎると「心のインフルエンザ」、うつ病になってしまう。

組織の力は強力だ。パワハラを内部告発しても、告発された側はのうのうと生き続け、告発した方は暫くの間をおいてから左遷されるといった記述は組織の本質をついている。佐藤でさえ放逐された強大な組織と闘うには、もう一つ別の世界を創ったほうがいいと提案する。宗教でもサークルでも何でもいい、もう一つの自分を見つけて、組織での人生を自分の人生の全てにしないことが大切だ。

半沢直樹シリーズがウケたり、こうした本が売れているのは、そんな生きづらい世情を反映している。生きづらい世の中になったと嘆くのではなく、生きやすい世の中に変えていく切り替え力が必要になってくる。

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苦手な人とも上手に付き合うコツがある。

佐藤優(2013)『人に強くなる極意』青春出版社

僕の感覚では、ビジネス上のそのような飾らない関係は、通常の業務なら40歳前後のベテランになれば社内外に20人~30人くらいはできると思います。(本書 p.93)

外国から証人を呼ぶための経費や弁護士費用などで、ざっと2000万円はかかりました。この費用は税控除にならないので、実質的には4000万円以上捻出しなければならない。同志社大学時代の旧友たちのカンパもあり大いに助かりましたが、かなりの額を塀から出た後の著作活動d捻出しなければならなかったのです。(本書 p.186)

いわずと知れた佐藤優が連載したものをまとめた本。外務省でソ連・ロシアとの外交交渉を行ったほか、東京地検に起訴されて検察官との交渉まで行ったという貴重な経験を持つ筆者のノウハウが詰まった本。筆者は人生でなかなか経験できないことは小説を読むことで疑似体験することを勧める。ソ連崩壊という百年に一度ぐらいの歴史的事件に立ち会い、特捜に狙い撃ちされた筆者の経験に基づくエッセンスが詰まった本書も、それと同じぐらい有用だ。880円で手に入るノウハウは、それ以上の価値を持つ。

人が生きていく上で他者とかかわらざるを得ない。組織で働くにしてもフリーで働くにしても、そこには相手がいる。気の合う相手ばかりならいいが、決してそうではない。友人関係なら気の合わない人と付き合わなくてもすむが、仕事だと気が合わなくても(お互いがそう思っていたとしても)付き合わざるを得ないことがある。合わないんだから仕方ない、では解決にならない。なぜ合わないのか。なぜそう思うのか。相手と自分を分析して合わない理由やその原因が見えてくる。

もう一つ、近年の「断る力」ブームに対して筆者は「断らない力」を勧める。特に若手から中堅のうちは断らずにいろいろと試してみたほうがいい、それは上司や周りが見ているから、と。そこから人間関係が広がり、世界が広がり、ダイナミックな人生に漕ぎ出すことができるのだ、と筆者は説く。

本書の根幹はここなのだ。合わない、無理と思考停止に陥らないで、どんな状況でも落ち着いて距離を置いて自分とその周りを見渡す。そこで自分にとって、自分の将来にとっていい方向になるように舵取りをする。合わない人ともなぜ合わないか考える。多くの仕事も断らずに、分量や難易度を考える。実際に仕事に追われていると大変難しいし、ぼく自身もそれはできているとは言いがたい。

忙しいときに本書を読もう。なぜ忙しいのか、忙しさには意味があるのか。本書は周りを冷静に見つめなおし、自分の仕事を考えるきっかけになる。