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うつ病は脳の病

※筆者は医者ではありません。いくつかの本を読んだ結果で書いています。診療が必要な方は難しいですが自分と合う医者を見つけてください。

うつ病は心の風邪?

うつ病では自殺の危険性が高まりますし、心筋梗塞などの一般身体疾患にかかりやすくなったり、その予後が悪化したりする可能性があります。高齢者の場合、うつ病にかかると、死亡率が1.8倍になるという報告もあります。

本書 p.14

1990年代以降、製薬会社はうつ病は心の風邪と銘打って大々的なキャンペーンを行いました。その結果、日本国内におけるうつ病患者は右肩上がりに増えました。

これは気軽に心療内科を訪れる人が増えたことと、ちょっとした気分の落ち込みもうつ病と診断する医者が増えたこと、どちらに原因があるかはわかりません。おそらくどちらもあるのでしょう。

しかし、うつ病は心の風邪というほど単純なものではありません。佐藤優などは心のこむら返り、あるいは心の骨折と言っています。気合で治るものではなく、適切な治療を施さないと治らない病です。それに慢性化する危険もあります。

うつ病の原因

現代の医学では、うつ病は心、すなわち脳の病気とされています。それとともに身体的な不定愁訴が出てきますが、その主な原因は脳です。

脳内ではいくつもの物質がやり取りされています。そのうち、うつ病に関係があるとされるのはセロトニンノルアドレナリンです。

セロトニンは精神を安定させ、ノルアドレナリンはやる気をおこさせます。セロトニンやノルアドレナリンが上手に行き渡らなくなり、気分が落ち込んだ状態が続くのがうつ病とされています。

抗うつ剤

脳内ではニューロンがセロトニンやノルアドレナリンといった物質をやり取りしていますが、そのやり取りがうまくいかなくなり、セロトニンやノルアドレナリンがうまくいきわたらなくなった結果、うつ病が発生するとされています。

現代のうつ病治療のうち、薬剤を使った治療ではセロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)を使います。ニューロンがセロトニンを放出しても、隣のニューロンに届くとは限らず、そのまま戻ってきて放出元のニューロンに取り込まれる場合があります。ノルアドレナリンも同様です。そうした再取り込みを防ぐ薬がSSRIやSNRIと呼ばれているものです。

うつ病の治療ではSSRIやSNRIを最大限使用します。風邪の時に風邪薬をちゃんと飲むように、うつ病の時にはこうした薬もちゃんと飲まなくてはなりません。

薬以外のうつ病治療法

薬以外のうつ病治療法では著者が得意とする認知行動療法があります。そのうちの一つがコラム法というもので、紙を5分割にし、それぞれに

  1. 状況
  2. 不快な感情
  3. 自動思考
  4. 代わりの考え
  5. 心の変化(結果)

を書いていくというものです。以下の本を使うと認知行動療法を実践することができます。

また、うつ病の主な原因の一つに人間関係があげられます。人づきあいが楽になるヒントとして著者は以下の10個を挙げています。

  1. 自分をもっと認める
  2. 他の人のことをもっと認める
  3. 問題点は何かを具体的に考えてみる
  4. 完璧な人間関係はない
  5. 意見の食い違いを恐れすぎない
  6. 言いづらいこともしっかりと伝える
  7. 言葉に頼りすぎない
  8. 思いこみから自由になる
  9. 思い切って自分流を捨てる
  10. 困ってもよい

特に1と8は難しいのではないかと思います。認知行動療法は患者自身の訓練と根気、時間が必要です。

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適応障害やうつ病には認知療法を試してみよう

うつ病は楽しめない病気です。また、動けなくなる病気です。そのために状況はますます悪化していきます。その状態を改善するためには、少しずつでも楽しめる可能性を探り、動くことが大切になります。最近の脳科学では、何もしないでいると、何かをしようという気持ちにならないことがわかっています。

本書 pp.57-58

つらい気持ちを楽にするためには、気持ちが動揺したときに浮かんでいる考え、つまり自動思考に注目してバランスの良いものに変えていく、認知再構成法と呼ばれる方法が役に立ちます。

本書 p.146

本書の著者、大野裕(おおの ゆたか)氏は皇后雅子様の主治医としても知られています。慶應義塾大学医学部を卒業後、コーネル大学、ペンシルバニア大学を経てラスカー賞受賞者のアーロン・ベック氏から認知行動療法の訓練を受けた医学者です。

いま、5人に1人がうつ病にかかるといわれています。そのせいか、心療内科・精神科に連絡しても初診までは数日から数週間かかります。その間は誰にも助けをもらえない、つらい日々を過ごすことになります。厚生労働省が電話相談を紹介していますが、つながるのは1割から2割程度だそうです。

本を読む気力が起きないかもしれませんが、もし起きる場合、初診までの間に認知療法の入門書である本書を読んでみてはいかがでしょう?

認知療法とは、いま直面している問題から距離を置いたり、いろんな角度から見つめなおすことでうつや不安を軽減しようというものです。また、やる気が出ないのではなくて出せないだけなので何か行動することも勧めています。

一つの方法として楽しい行動を見つけることを勧めています。

月曜日火曜日
8時起床 1点
着替え 2点
9時朝食 3点起床 2点
着替え 3点
10時犬の散歩 6点朝食 3点
11時
12時昼食 6点昼食 6点
本書 p.62より

このように一日の中で一番強い達成感や楽しさを10として一週間を通してどの行動が楽しかったかを振り返ります。なかなかうまくはいきませんが、少しずつ楽しかった行動を増やすようにして気分を前向きにしていくのが、認知療法の一つの方法です。

そのほかにも行動計画を立てたり、自分の思考の癖を見直すなど、多方面からうつにアプローチしていきます。さらに詳しくは『こころが晴れるノート:うつと不安の認知療法自習帳』などが参考になります。

しかし、本書では以下のようなことも書かれています。

できれば、行動をする場所や物を目的に応じて使い分けるようにしてください。ベッドは寝るためだけに使い、疲れをとったり身体を休めたりするときには、居間のソファーや茶の間の畳を使うようにします。

本書 p.71

在宅勤務が増えた今となっては、仕事とプライベートを切り分けるのが難しいのが現状です。だからこそ、うつの人が増えたのかもしれません。

参考リンク:
こころの健康対策~うつ病~(認知行動療法の記述もあります)